葉女/木屋 亞万
2年後、同じ道の同じ場所で
三輪車とランドセルとコートは
それぞれ美しい緑色を輝かせて風に遊んでいた
ふと少女は何かを思い出したように立ち止まって
「人間はどうして約束を破るの」と呟いた
その声に呼応するように、枯葉の中をネクタイが2本、
風に引きずられるように、彼女たちの方に擦り寄ってくる
「知らないわ」と女は呟いた
切れ切れの落ち葉は切なく道の脇に沈みこんで
自分がどこから来てどこに行くのか
道行く人にかさかさと問いかけている
けれど誰もその葉が何の葉であるかを知らない
そういう約束になっている
戻る 編 削 Point(3)