カーニバル/Anonymous
 
女を蹴り付けてたたき出すのだ。
そいつの笑い声があまりにも粗卑だったからだ。

僕はだんだんいらだってくるのだ。
その首の生命力にいらだってくるのだ。

気がつくと、そのマンションのその部屋には誰もいなくなり、
窓際におかれた、ヨカナーンはこちらをじっと凝視している。

カーニバルも終わっている。

でもおかしいじゃないか。
お天道様はまだてっぺん。
カーニバルが終わるなんておかしいじゃないか。

自分の部屋なのにドアが開かなくなっている。
ヨカナーンはこちらを見ている。

自分の身体なのに四肢がいうことをきかなくなっている。
ヨカナーンはこちらを見ている。

ヨカナーンの目はうすく濁っている。

それは夏の日であるはずだ。
暑く苦しい夏の日であるはずだ。

切られた首に生命力を感じるのは臭気の似合う夏であるはずだ。
僕を狂わせる夏であるはずだ。

僕は自分で目をつぶす。

その闇の中まであいつは、ヨカナーンは追って来てくれると
僕は信じていた。




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