正夢。/ゆきちゃん。
 
どうでもよかったり
気になったり
悲しくなったり
優しくできたり
好きだったり
ムカついたり
私は、
「私」を、
あの日に置き去りにしてきてしまった
だから全部わからないんだ。
わからないふりをしているんだ。
本当はこうやって寂しさを埋めている私が
どうしようもなく傷ついていること
良くわかっている

社会人は抱き合ってキスをしている間
ドキドキしていて
私はちっともしていないから
イライラする
感じるふりをして
唇を離して
鏡に向かってあえぎ声を出す

朝になれば少し申し訳なさそうに変に優しくされて
彼は昨夜の出来事のせいで罪悪感でいっぱいになっていて
きっとそんな自分に酔っている。
私はまたイライラして、けれど、そんな素振りは見せない。
またね
と彼は言う。
化粧が崩れてぼろぼろの顔のまま私は電車に乗って帰る。

そうして今度は
おととい髪を切ってくれた美容師と
やってみたい。とか思う。
つきあいたい。とは思わない。

あの男の顔はもう思い出すことすらできない。
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