夜鳥/木立 悟
 


鴉のはばたきに覆われて
夜の鐘は少しだけ揺れる
刃の音 鋼の音
夏とともに終わる音
音はただ音としてはじまり
やがて静かに変わってゆく



前転する光と
前転する黒羽が重なり
低く地を飛ぶ多翼の眷族となり
からだを持つすべての鳥を憎んでいる


(溶けては燃える鴉であるなら)
(火に鳴りわたる鴉であるなら)


夜の鳥の声
枝きしむ音
葉の落ちる音
屋根あるく音
夜をどこかへ連れていく歌
連れていかれる夜を飛ぶ鳥



空と水たまりの行き来に飽きて
ふたつの空を見つめる鴉に
羽のかたちの種は降る
浴びるようにはばたく鴉
ふたつの空にかがやく夜の陽
小さく冷たい光の群れが
羽のかたちのまわりを流れる
踊るように
手のように
歌うかたちのまわりを流れる





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