例えば/松本 涼
 
ほろりと私が手のひらを開くと
ふわりと私の手のひらに
乗せられるものがある

それは夕暮れの太陽の熱のように
網戸越しの風に靡くカーテンのように
何気なくふとする感触で

手のひらを眺めても
それがどこからやってきたのか
私には分からない

それでもしばらくは
私は手のひらを閉じない


ありがとう
と想う

ごめんね
と想う

ピアノの連弾のように
私は重ねる


願うときにはそれは
違う姿で現れるのかもしれない


例えば季節のように


例えば君のように


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