風船/ホロウ・シカエルボク
 






魂の裾野を幻覚が越えてくる火曜日、虚ろな目をしたテレビ・タレントが掌だけで盛り上げるような調子、いじけた雨粒が果てしもなく降り続き書こうとしていた言葉のことを忘れる…軋む椅子に横たわる様子はまるで脚を失った豹のようだ
知らない番号からかかってきた電話、受話器の向こうの汚れた声の婆さんはあんたがかけてきたんだと言い張った、そんなものは知らない、あつかましい年寄りの知り合いなどもういない、ボケた婆さんなんかに誰が携帯など手渡すのだろう…?椅子が軋んだ音に舌打ちをした拍子に電話が切れる
いつか昔遠くに飛んでいった風船のことを思い出す、風船を買ってもらってはすぐに手を離すの
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