青木そうすけ≦プル式というカテゴライズ/プル式
 
らなくなってしまった
思案の末に狐の毛を集め紙縒り糸を紡ぐ事にした
しかし紡げど紡げどもう少しという長さで糸は消えてしまい先に進まない
おそらく数年か数十年こうしている気がする
しかし一向に腹が減る事も無ければ狐の毛がなくなる事も無い
そのうち井戸には蓋が敷かれ昼の明かりさえ入らなくなってしまった
それでも糸を紡ぎ続ける事を止める事が出来なかった
止めてしまえばもう人として居られない気がしていつまでも紡ぎ続けた
誰も居ない暗闇にはいつしか静寂のみが広がっている
それでも時折糸紡ぎの「シュシュッ」という音の向こうで誰かの声が聞こえた。

-----------
[次のページ]
戻る   Point(1)