青木そうすけ≦プル式というカテゴライズ/プル式
 
握った手を突き出すと少年に何かを渡した
少年は青年に背中を向けて駆け出した
どこまでもどこまでも続く多摩川の土手を
青年は少年が見えなくなるまで見送っていた
少年が見えなくなると青年もまた夕の闇に見えなくなった

それから十数年がたち少年は青年になった
ちょうどあの日の夕暮れの様な多摩川の土手で
青年は土手を走ってきた少年に何かを渡した
あの頃の自分より少し幼い顔をしたその少年は
孤独の意味を知っている様な顔をしながら
不思議そうに青年を見つめ返すと
ありがとう
そういって走り去ってしまった
青年は少年が走り去った先を見つめ
少年がすっかり消えてしまうと
土手の階段
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