『玄冬』/東雲 李葉
眠る木々の静けさ
音は終わるように始まり
あまりに薄く高く響くから
今だ耳の奥で細く鋭く
白い大地と
同じく 白い空には
蝶番の境目はなく
折れも拡がりもせず
こんなに一つに融けて
私は汚点
白紙に生まれた一つの黒点
雪が私を呑むのが先か
私が白を染めるのが先か
冷たい大地は
眠っている でも
生きている暗い土の下
音はしない でも
生きている
四肢が絡めとられて
包まれていく
夢を見ているのだ
何かと溶け合い
一つになる
あるいは
私は何かに溶かされている
静かに音は
響いて 響いて 響いて
静かに音は
終わるように始まった
でも本当は
始まるように終わる白い命
私という悪を見据える玄い冬
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