黄昏丸日誌/
音阿弥花三郎
海図を広げ ありえぬ海域をめざす
日没には出発せねばなるまい
もはやこの港も甘い母乳色の波が立っている
錨を上げ 滑らかな鉄にしがみつく牡蠣をとる
晩餐に間に合うように
夜が甲板にも帆にもにじり寄っている
ありえぬ港を出帆し
ありえぬ海を疾駆し
ありえぬ港をめざした
いつも 来る日も来る日も
日没をひたすら目ざして行く手に波頭をあげ
永遠の黄昏に祝杯を挙げ
船員は皆歌を歌い
牡蠣の味に昏倒したのだ
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