飾り窓のひと/恋月 ぴの
 

どうしても亀頭から口を離してしまう私がいて
ちいさな呻き声を合図に
尿道から噴き出した青臭い精液が男のひとの下腹部を汚した

あの臙脂色のストールって
遠いところへ行ってしまった娘さんからのプレゼントなのかな
今日も見かけた老女の丸い背中
止むことを知らぬ繰言が私の耳元まで聞こえくるようで

誰かさんって私の母、それとも私自身なの

来客を知らせるインタフォンが私を現実に引き戻し

いそいそと身支度を整える春売りおんなの襟足は
情けなさとは対極の心模様に堕ちて酔いしれる




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