押入れの中/
多々田 駄陀
夢精した春の頃、
ボクの青春は 柳行李の片隅に
隠されていた。
押入れに積まれた
布団の染みから
ボクは産まれたらしいが、
それは 赤色の混じったヤミ
だったと
ボクは覚えている。
今北小袋 木造長屋の
押入れの中に
川が流れる。
柳行李に積み重ねた
ボクの青春が
一頁ずつ 剥がれては
流れていく。
ナマメカシく 艶やかに
一枚、一枚 剥がれては
川に連なって、
艶やかに ナマメカシく 連なって
ボクの青春が 流れていく。
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