子守唄/悠詩
 
んだよ」
という鍵を差し込む
辿り着いたアトリエの奥に
縋りついたいにしえの言葉



詩歌の化石  lyric relic




それは先駆けだった
ひとひらの雪が舞い降り
少年の乾いた唇に触れて溶けた
堰を切ったように降りしきる雪
流体の先駆けとなったひとひらの雪は
赤い唇のなかに鼓動を捉えていた
真っ黒に汚れている闇が
真っ白に埋もれていく
仔犬を縊った手を伸ばす
流体の雪から掬い取られた
ひとひらの白いかけら
結晶の先端の欠けた断面は
とても痛ましく
とてもいとおしく
とこしえに刻まれる二重螺旋の
共鳴する音が聞こえる
誰とも交わら
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