挫折の青/亜樹
 
、じっとそれを眺める私に、妹は気恥ずかしげに声をかけた。「どう?」「どうかな?おねえちゃんこの色好きだったよね」と。
 それは確かにあの日私が愛した、夜更けの空の色に似た青で、私は酷く泣きたくなった。
 
 妹は来年成人するのだけれど、相変わらず将来の話なんか少しもしない。ただただ毎日絵を描いて過ごしている。けれど、彼女は輝いている。ひどく幸せそうである。
 思いだす。高校時代の彼女は、今何をしてるのだろうかと。
 もし、今でも彼女が絵を描いているのなら、私は彼女に言いたいことがある。

 そうだ。私は貴方のようになりたかったのだ。
 貴方のように、妹のように、誰に何を言われたって、ただ自分の好きなことがしたかった。
 だからあの時、安易な同調はしたくなかった。

 いくら焦がれても、もうあの日の情熱は消えていて、私がスケッチブックを開くことはもう二度とないだろう。
 このごろ、かさかさと胸の奥でなる音がする。残ってしまった情熱の燃えカスは、不快感しかもたらさない。これはもう、どうしようもないのだろう。多分、あの日私は間違ったのだから。
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