夜とかけら/
木立 悟
壊れたひとつの器の代わりに
金と緑の流れのなかを
ひとつの仮面が鳴りつづけている
はざまの窓をしたたる空
鳥がゆうるりと
首を踏切へ向ける
夕の稲荷
すぎる列車
雪の稲荷
破邪の衣
窓枠の心臓
陽を振り返る猫
咲かぬ花の群れ
地平の影を聴く
大切なものを壊すたび
かけらは鈴になってゆく
幾度も鈴を舐めるたび
口は鈴になってゆく
林の隅で
小さな息が招いている
衣擦れが夜を起こし
緑に潤む
空を覆い
仮面は渡る
音は降り下り
鈴を鳴らす
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