白いみずおと /前田ふむふむ
える、
駅のホームのベンチに、いつものように腰をおろす。
口から湧きでる白い息に一日の出来事を仕舞いこむ。
出来事が、わずかに長いのか、はみだしている。
それが、わたしのはきだした胸を、いつまでも刺している。
白い息を数えながら、束ねていると、息の間から、
透明な列車が、ホームに滑り込んでくる。
ひかりとともに、溢れる乗客の雑踏に眼をやれば、だれもいない。
笑っているわたしが、ひかりのなかで、
――ももの接木をしている手の跡が揺れて――
二階の瞼をひらいて、いつものように、
十二段の階段を昇り、
窓辺に薄らぐ夕暮れの大人の肩を叩いてみると、
きみと見た青い波の音がきこえてくる。生きてやる。
灯台の窓から伸びる閃光が、雪のなかをゆく、
一羽の伝書鳩を照らしている。
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