白いみずおと      /前田ふむふむ
 


シャボン玉のなかの、人気の無いシャッター通りを
くぐりながら、眠れない半分の顔は暗闇の書架を見上げた。
玩具の戦争が終わったら、地平線のうしろに隠してある
重油の山を売り払って、腹が裂けるまで魚を食べよう。
竹槍は、その時まで発狂から古井戸を覗かないための、
みずで出来た点滴。とても奇抜に出来ている。
復員――忘れ去られようとしているものに鋏をいれる者たちよ。
君の右手についているものは、何だろう。
わたしの右手にも刺さっている。
賑やかに街中をいく女子中学生にも、
随分としゃれた注射針がついている。
入口が閉ざされて、悉く、窓が内側から封印された灯台が、
海鳴りを
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