磨く夜/
因子
手のなかの電池の切れた携帯電話だけが熱かった
毎日一度も鳴ることはなく
しかし今日も握りしめて生きている
何もかもが煌々と夜を照らしても
手のなかの電池の切れた携帯電話だけが熱かった
イヤホンからの声に磨かれて
世界はあすにもおわってしまうと思う
手のなかの電池の切れた携帯電話だけが熱かった
それだけだった
最初から/なにひとつない夜だった
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