金魚/
音阿弥花三郎
机から滴り落ちる水
机には陶器の水差し
水差しの中に一匹の金魚
ブロンズのように沈む
誰も覗かない部屋の誰も触らない机
その上の誰が置いたのか分からない水差し
金魚は目を閉じて永遠にひれを揺らす
孤独の楽しさに孤独に笑う
窓も閉じた暗い部屋の黴の臭い
ごく稀に跳ねる金魚
ポチャンという音を聞かれる気遣いはいらない
しかしこの赤い鱗の小魚の愉悦はもう続かない
まもなく襲う災いが水差しを倒す
床で跳ねる金魚を水に戻す者はいない
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