夜とまなざし/木立 悟
 




曇の奥を塗る機械
膝より低く咲く冷気
土の下に見つけた花
あなただけが見つめた花


後ろ姿の母の電話が
谷の底に沈んでいる
言葉は未だ
鳴りつづけている


家と家のはざまの瓦礫の
かがやく足跡の滴を追い
色もなく夜になり
ふたたび 暗がりをゆき


雪につもる光
じっと何かを見つめる群れ
音のない川のかたち
熱は時間よりも目に近づく


きらめくものとなり
雪の上の
はじめての跡となり
あなたは ふと
追われるものとなる


右の窓には夜
左の窓には白
まなざしは
花と街のはざまをゆく

















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