伝書鳩/天野茂典
 

胸が痛い
鳩が住み込んではばたいているのだ
絞め殺してやることもできない
それは自分をほふることだからだ
スペイン広場でもないのに
鳩がぼくの内臓をついばんでいる
肺病や 肺気腫でもない
鳩に餌と水をあげようか
書くことは飢えることだ
鳩はそれを知っている
だからぼくの胸のなかに
さらなる飢えを植えつけるために
やってきたのだ
詩を書くことはボクシングとおなじだ
痛みをこらえて相手をマットに
沈めるまで手をやすめてはいけない

ぼくの鳩はことばの伝書鳩だろう


   2004・8・15
戻る   Point(1)