[独り日暮らし]/東雲 李葉
 
すぎて何も見えない。
年齢も顧みず留守の右手を伸ばしかけても、
すべてはもう終わった後。この街には誰もいない。
帰りたい。一人になりたい。
帰りたくない。独りは嫌だ。

見つからない食卓はとっくの昔に下げられていた。
冷たい料理を好かない舌は贅沢を覚えたのではない。
過剰なまでに温めて。寒くないよ、寒くないよと。
自分の指で慰める。かわいそうな子、かわいそうな子。
ふと私は明日の朝の白線を思い浮かべる。
一人は軽くてどこかに行ってしまいそうになる。
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