夜の山/木立 悟
板のような
霧のなかの
岩をめぐる
冬のまぼろし
応えは応えつづけている
応えられぬものはないかのように
ひとつひとつこぼれゆく
ひとつひとつ消えてゆく
長い夢の記憶をたどり
痛みの無さ においの無さ
土の上 水の上
花の不安の道をたたむ
夜より高く
暗い山を
小さなものが登りゆく
何もないこと
明るいこと
川に沿い
花と花の露があり
風の茎を映し
鈴になる
明けることのない夜のとなりに
転がり明ける夜があり
花を花に咲き散らし
指を脱ぎまた指を脱ぎ
うたに積もるうたを数える
戻る 編 削 Point(3)