人妻温泉旅館/atsuchan69
 
こころ秘かにそう呼んでいた

――温泉宿ではなく海辺の一軒家を

灰褐色をした雑木林と
露出した山肌が囲み、
いつからか戻らなくなった主の代わりに
月に一度か二度、ぶらり現れては泊まってゆく

そろそろ帰るよと言って
宿代のつもりを二枚、むりやり手渡す
君は幼い娘とふたり手をつなぎ
寒椿の咲く庭へ出て私を見送った

笑顔にうかんだ乳房と唇、、

ただ昨夜の褥一枚、微かな温みをのこして





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