君の背中に追いつかない/秋桜優紀
、だっけか。
私は前を見て歩いていく。だから、待っていて。私は生きる。そうして、私たちの願いを絶対に叶えてみせるから。
完成した最後の一羽を紙袋に入れ、天井に向かって思いっきりばら撒く。ベッドに寝転んで上を見上げると、星が降ってきたかのように、ひらひらと様々な色の鶴が、私の滲んだ視界を埋め尽くして舞い降りてきた。この中のどれか一羽に、私が施した唯一の、そして、とびっきりの「パワーアップ」がかかっているはずだ。
降りしきる星の下で目を閉じた。胸の痛みが溶け出したあたたかな涙が、つ、と頬を伝って落ちていく。真っ暗な世界の中で、鶴が着地するかさり、かさりという音が私の耳を優しくくすぐる。
最強の千羽鶴たちと一緒に、この世界で私は生きていく。もう少し休んでいていいよ。私はまだ、君の背中に追いつかないから。
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