君の背中に追いつかない/秋桜優紀
知り得ることもない。私は彼を、拒絶してしまったのだから。
昼間に発作を起こし、その日の気分は憂鬱だった。発作が起きる度、ドタドタと音を立てて無遠慮に近づいてくる死をとても憎く感じた。もっと忍び足で近づくことだってできるはずなのに。悠人が育んだ生きる希望などとっくに消え失せていて、また、早く死にたい、と思うようになっていた。
消灯時間を過ぎ、部屋は暗闇に包まれた。窓が鳴る音ががたがたとうるさい。その夜は発作が起きた日の常で、なかなか寝入ることができずにいた。
こんこん。
数時間後、ようやく眠りの淵に辿り着いてうつらうつらとしているときに、何かを叩く湿っぽい音によって、私の意識は覚醒へ
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