君の背中に追いつかない/秋桜優紀
あるじゃない」
「え?」
悠人の折り鶴の尾となる部分の片方は、律儀に折り曲げてあった。
「千羽鶴の鶴は、病気が治りますようにって上を向いてるから、頭も真っ直ぐにしないとダメなんだよ」
悠人は知らなかったとばかりに、じっと自分の鶴を見つめてしばらく悩んだ後、いかにも最初から決めていたように叫んだ。
「これは、ほら、特別製なんだ。『悠人スペシャル』なんだよ!」
「何よ、それ」
「上に昇っていったら天国に行っちゃうじゃん。だから、こう、前を向いて前進!って、ほら、だからさぁ……」
自信なさ気に尻すぼみになる悠人が、何だかとても可愛く感じられた。ふざけて悠人を思いっきり抱き締めてやる
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