君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
紙を折り始めた。程なくして、一つの形が現れる。
「鶴?」
折り方が雑であるせいでかなり不恰好ではあるが、それは紛れも無く折鶴であった。
「お姉ちゃん、千羽鶴って知ってる?」
「ああ、うん。もちろん知ってるよ」
「それ、作ろうぜ」
 悠人は、ナイスアイデアとばかりに胸を反らして、自分の折った黒い鶴を高く掲げる。
「千羽鶴って、お見舞いなんかに持ってくものじゃないの?」
「いっ、いいんだよ、別に。それに、自分で作った方がなんか強そうじゃん。ほら、やっぱり病気の人の気持ちって、本人が一番良くわかってることじゃん。だから強いんだって、とにかく。こう、思いがこもってるーみたいな」
「ああ…
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