君の背中に追いつかない/秋桜優紀
子供だからこその混じり気のない真っ直ぐな気持ちは、受け取る人を心地よくさせてくれる。それは、私も例外ではない。男の子に悪い気はするけれど、こんなに笑ったのは本当に久しぶりだ。入院して以来、こんなに笑える日が再び来るとは思っていなかった。この男の子は、本当にたくさんのことに気付かせてくれる。何だかそのことが、嬉しくて仕方なかった。
「あはは、ありがと、ね」
「何がだよ」
「ううん。何だかわからないけど」
「何だそれ」
本当は君ととても似ている感情なのだろうけれど、言葉にするのはやっぱり難しい。彼が「よくわからない」と言ったのも、今なら納得できる。
男の子は壁にかけられた時計を見やり、や
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