だれが詠う/アングラ少女
 
だれが詠うか知らない
法螺貝の夜の裡で
しだいに硬度を増す湯桶のなかの水
その漆塗りの器を打つ釘が砕け
またひとつ砕けて黒い胞子をとばす
一方ではわたしの腕に
抱かれる男の色素が剥ぎとられていく
だれかが詠う
わたしの肉体から解ける世紀にかけて
おどける小人の認識へ
沼へ
蛮族の踊る背景で信じられている
月夜の美しき乳房の峪その不穏な
陰溜りにひびく音楽
現世を生きない匠らが企みに
くりかえし共鳴する
軟骨の半径が弔われる
漆黒の挽歌
だれが!
憎悪と卑屈に喘ぐ者
無意識の拷問に見舞われる者
鮮烈なる受難の断面図
踊りくるいふみ躙られたのはわたしの女
呪われるのはわたしの愛撫する男
翡翠の鞏膜からさらけだす熟れた液体
その粘質に密着する仔馬の偵察隊が
念じない数多の信仰を侵すのだ
悟りきれない狂気と不毛な陣痛のために

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