左頬にキスを/智鶴
溺れていく架空の感情と
傷付いていく僕の呼吸
限りなく嘘に近い紛れもない真実
また喧騒の中に
沈む、沈む
嘘と水と夜と
僕は花みたいに死んでいて
君が夢みたいに歌っていた
本当に楽しそうに
傷なんて付かない
凍りつくような暖かさと
メランコリックな君の感触
全ての裏側に気付いてしまうような
その暖かさに一瞬でも触れられたから
罠と知りながら
その偽りに愛されていたかった
夢が消えて
歌が途切れて
僕は嘘みたいに目を覚まして
君が隣で死んでいた
決して同じ瞬間には生きられないと知っていたから
君は僕を愛さなかったし
僕は君を追わなかった
肌を裂くような冷たさの
メランコリックな君の感触
哀しそうな泣き顔が残像のように
僕を追いかけて
死なせてくれない
罪と知りながら
その偽りを信じていた
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