秒針/さいらと
この家に時計は六つある
それぞれがすこしずつずれた7:18 AMを報せ
わたしは一番遅いもので目を覚ます
それからカーテンを開けて窓を開けて
酸素をよく含んだ朝の空気を肺に取り込むのだ
曇り空の拡散するひかりが眼を刺して
どこかから赤ん坊の泣き声が聞こえたけれど、
(わたしはこれからだれをよぶこともなくしんでゆくのです
かちり こちり
(わたしはこれからだれをよぶこともなくしんで
かちり こちり
(わたしはこれからだれをよぶこともなく
かちり こちり
(わたしはこれからだれを
かちり こちり
(わたしはこれから
かちり こちり
(わたしは
かちり こちり かちり
一番早い時計が心臓と足並みを揃えはじめて
意識が文字盤の中に落ちていった
さあ今日も定刻通りです
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