蠍座の夜明け ☆/atsuchan69
沙漠。人たる飛沫の色と喘ぐ口
そして些少の水、忽ち陽も声なき砂に埋もれ
凛として立ちつづけた女の淡い影
匂い燻る、榴弾の転がる塹壕を後に
夜の静寂が痩せた躯(むくろ)を晒して
番いの命、その片割れが音もなく地に伏し
手負いの兵士が今また一人、息絶えて
死へと、別れも告げぬまま急ぎゆく
握りしめた手に残した、認識票の記号。
在れ等は、やがて朽ちたる骨と肉
我ぞ、さも逝くべき烏合のひとり
列の最前に銃をかまえては、
静やかに、報復を叶える引金へと
憎むべき標的を狙い、刹那に撃つ――
唯、煌くウェヌスの星へ
笑みし、彼方を望む暁に崩れて
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