さしすせそが言えなくて/木屋 亞万
 
なる小枝の背筋などわからなかった)
飛行機が私と空の隙間を飛んでいる
(飛行機雲が空を横断して、鋼鉄のチャックが縫い付けられていく)
吐く息が幼い雪崩のように流れていく
(温もりは目と鼻の先で寒さに負けてしまう、私は寒さに抱かれている)
私は浮かんでいる、どの雲よりも温かい、自信がある

背中を押す手の力が弱まり
地に足が着いてしまう
他の自転車が到着し、置かれていく
数歩進んだ先で、新たな自転車の少女は立ち止まり
見上げる、頭につけている孔雀の羽がそよぐ
少女が風と空の言葉を呟いて
滑らかな速度で飛行機雲を越えていく
さしすせそが言えなくて
私は少女に先を越された

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