さしすせそが言えなくて/木屋 亞万
 
薄氷が張った空の
水色の向こうに何があるのか
私にはわからないけれど
朝、目的地の自転車置き場で
ふと、立ち止まり見上げていた
空には、肉眼で確認できないほど
かすかな穴が開いていた
誰かが投じた石に破れた穴

少し反り返った背中の
肩甲骨の狭間を押されたような気がして
私はわずかに浮揚し始めていた
穴を塞ぐものを私が持っているか
探るように、背骨の中腹辺りを押し上げる手が
静かに私に入り込み、身体の淵が溶けていく
このままでは空気にされてしまうよと
大地の子は心配そうに私に言う

街路樹の枝が真っ直ぐ伸びている
(数ヶ月前そこにはたくさんの葉があって軸となる
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