ゴシック・ロリータ/氷魚
 
いつのことだったか
夜になると冷え込んでくるような
少しさびしい季節の
もっとさびしい時間
黒いドレスを着こんで
雛鳥のように歩いていた
白い脚のふくよかな
可愛らしいお人形さんに
軽口を叩いたことがあった

可愛子ちゃん
あなたには
まだ桃色のおリボンがお似合いよ
大きくてひらひらした
そういったもの
頭にちょこんと乗せては如何

お人形さん
黒いドレスを着て
黒いお粉で目元を飾った
可愛らしいお人形さん
歌うように答えた

好きだけれど
私には似合わないの
私は桃色よりも
もっと生々しい色
耽美で
眼を伏せた淑女のようで
奥ゆかしい

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