往路/木立 悟
闇と闇が話している
静けさが首すじを去ってゆく
遠い扉から
のびる明かり
岩の呼吸を冷ます波
夜へ遠のく夜を照らす熱
朝には消える
氷の鐘
雨のなかの灯
滴を横切りつづけるもの
動きは赤い線になり
熱のむこうに音をひとつ置く
砂のまばたき
紙が白が羽が白
ゆうるりほぐす
ゆうるりつむる
明けない夜の流れの前に
泡は目覚め 曇を揺らす
分かれゆくうた
ひとつひとつの色を見つめる
はたはたと裏切り
氷の鐘を持ち去る手
ふたたび鉛の首すじをすぎ
静けさは幾度も星へ到く
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