林道の彼方へ /服部 剛
 
 立原道造記念館に行った日 
 「立原道造と堀辰雄」という図録を 
 細い両腕で包むように 
 君はぎゅっと抱き締めた 

 後日僕は独りで 
 同じ場所に佇み 

 在りし日の詩人の描いた
 洋燈の絵が 
 展示硝子の内に灯り 
 並んだ原稿用紙等を 
 仄かに照らしていた 

 それから 
 クリスマスと正月は過ぎ・・・ 
 君に「立原道造と堀辰雄」を 
 手渡すことができぬまま 
 手元に置いて頁を開けば 

 在りし日の二人が交わした 
 何通もの書簡に囲まれた 
 一枚の写真が 
 遠い郷愁へ僕を吸いこむ 


{引用=愛はいつもかへっ
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