傷ついた世界 /いねむり猫
わたしがどれほど 傷ついていても
私の片方の目がつぶれ
全身に 治療のしようのない潰瘍が広がりつづけていても
この汚れた空に向けて
窓から この美しい蝶を放つ
この世界が どれほど汚れ
窓から入る風が 数え切れないほどの回数リサイクルされた
石油臭い空気でも
私は胸いっぱいに吸い込んで そして 歌うのだ
希望の歌を 恋の歌を 神に感謝する歌を
私を哀れむことは許さない
私は 数十億の人々と同じように
やはりこの生を 生き
新たな日々を 毎朝胸に抱き
そして 悲しみより少しだけ多い喜びを探す
体に迫る死の恐怖より 少しだけ多く 心拍と呼吸を繰り返し
痛みよりすこしだけ多く 体を動かす喜びを生み出し
鏡から目をそむけたくなる気持ちより 少しだけ多く
あなたの笑顔を探す
この傷ついた世界よ
この汚染され続ける泥沼の中で
私は生き続けている
私を哀れむことは許さない
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