アリゾナのマドンナ/結城 森士
「ジェニファー。ジェニファーじゃないか」
後ろから男の呼ぶ声が聞こえた。
「いいえ違います。私の名前はシャクトリムシ。ミドルネームはヘンリエッタ」
するとざわめきが起こった。尋常じゃない雰囲気に顔を上げる。
ここは会議室。そして私は書記係。
「何を寝ぼけてるんだ三崎くん」
茹だる暑さの中で朦朧とし、
楽しいお昼寝タイムを一人、満喫してしまったらしい。
また、ちょいとばかし痛い寝言をぼやいてしまったようなのだ。
「いったい、何がシャクトリムシなんだ」
権藤部長、通称ゴンザレスがひどくご立腹だ。こいつは面倒くさいことになった。
「申し訳ありません。会議中
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