朝雪/たりぽん(大理 奔)
妙に窓が明るいと思ったら
昨晩降り続いて街を覆った雪が
朝を反射していました
氷ノ山(ひょうのせん)の上で薄灰色の雲がただよい
若桜(わかさ)の木々が瑠璃細工になり
冷たく寒い朝が、まぶしいのです
泡立つ岸壁の方向に吹く
風が街路樹を刺します
あたたかいものを
何ひとつ見つけられないというのに
この朝は、なんと明るく美しいのでしょう
霊石山(れいせきざん)から三羽の鳶が
獲物の温もりを探して
低く、ゆっくりと旋回していきます
まぶしさに切り抜かれた
影絵の街では
軒下に逃げ込んだ夜のなごりを
薄茶色い野良犬が
ふるえながら貪っています
星の見えない夜をくぐりぬけて朝は
この朝は、なんと明るく
美しいのでしょう
戻る 編 削 Point(3)