タマトギ/不可思議/wonderboy
 
合う 表情の中から
何かを知ろうと言葉を待つ
「私はタマトギ 魂を研ぐ者
光の塊は 魂そのもの」
老婆の声は井戸より深く
男はなぜか一歩も動けず
「私にそれを預けてはどうか」
老婆の両手は男の胸に
男は倒れる かすかに聞こえる
生死の間に境は無いと

今日も老人は魂を研ぐ
あらゆる風景が生死を説く
旅人は繰り返す毎日を問う
月や波が音を纏う
今日も老人は魂を研ぐ
嘘のない心が錆びぬようにと
旅人は繰り返す毎日を問う
膨大な時間に足すくまぬようにと
あらゆる風景に神様が居た頃
道具や厠にも神様が居た頃
儀式や祈りが意味を持っていた頃
目に見えぬものを信じていた頃
人々が自然を愛していた頃
人々が家族を愛していた頃
人々が恵みに感謝していた頃
誰にでも帰るべき居場所があった頃


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