わたしが花を手折る理由/汐見ハル
花を 手折るのが
わたしであるうちは
わたしは花ではなく
手折られることもない
ナイフを構えるのが
わたしであるうちは
わたしは傷とはならず
痛みにうめくこともない
無数のあなたを
手折りつづけ
ふみにじり
いためつけては
あなたを
あなたを
わらう
いとしくさえ おもう
花になれなかった
未分化な
あまい かたまりを
のみこんだままの
そのだらしない輪郭を
たしかめないですむのだから
差し出された花束に
うっとりと頬をうずめて
贖罪のようだ
ひとかけの氷を
水に浮かべる様を想う
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