夜/高橋魚
 
仕事を終えた青年が
自転車に乗り家路を急ぐ
冷たい冬の空気の中を
逃げるように疾走する

家に着くと
既に明日が待っていて
滑り落ちるように
風呂と食事をこなしていく

そうして彼は
布団に入る

目を瞑ると
夜の非空間性が
彼に思い出させる
置き去りにしていた場所を

そして彼は
時間も空間も忘れ
そこに向かって歩いていくのだ
奥の方にあるその場所に


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