ギリシャ/天野茂典
 
 
 

  秋風がク−ラ−のごとたちそめてことしの夏も花火
  のようです

  これからは手紙も赤くそまるでしょうトンボのように
  君届くまで

  ひびわれたアスファルトに咲く港湾の錨のように
  笛がなります

  異郷からながれついたよ壜の鈴涼しげになる銀幕の
  赤

  白浜の砂をシャベルでほっている狼男の百人一首は

  高原のツリガネニンジン若草の疲れたころに雨を
  呼びます

  いまもまだ時計仕掛けのオレンジがアテネの街路に
  稔っています

  なぜだろうちかよりがたくパルテノン神殿までは
  螺旋を描き

  かつて詩のオリンピックがあったというギリシャよ
  あのポン引きおもう

  夏草のいきれのままにいつまでも麦わら帽子を
  しまうなよ君

戻る   Point(0)