すこし優しくなれるのは/アズアミ
 
駅のホームで
すこし優しくなれるのは
いつもとはちょっと違う場所で
電車を待っているから

いつもの道で
すこし優しくなれるのは
切りとられた空が
それは
それは青かったから

昼下がりに
すこし優しくなれるのは
時計の針が
てっぺんを過ぎて
背中を丸めたから

夕暮れに
すこし優しくなれるのは
きんいろに染まる街が
模型のようで滑稽だったから

真っ暗な部屋で
すこし優しくなれるのは
自分のスイッチも
ついでに切ってしまったから

明け方過ぎに
すこし優しくなれるのは
物語のはじまりを
実は、密かに
待ち侘びているから


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