六角の箱庭/あおば
ルを取り上げて
桟橋へと向かう
家ではごつい父親が
赤鬼のような顔をして
待っているだろう
こののままどこかにゆきたいと思いながらも
舟の暮らしは無理だと
幼いころから承知している
客船に乗り込んでゆく人たちには
想像できない世界があって
今日も船縁を荒らしているのだ
海の向こうの国のことはなにも知らないが
そこには似たような世界があって
船縁を叩いて暮らす若者が居て
ぼんやりと空をみているだろう
骨組みを失った国には
被災者が集まるところもなく
一列に並ばされて
売られるように
国を出るのだろうか
重いオールを繰りながら
少年は意識の隅で考えている
戻る 編 削 Point(7)