子/木立 悟
海のにおいの雨
さかしまと笑み
風を赦す
告げるものなく
歴史を失う
黒く 短い道
雪に埋もれた野の向こう
雨がひとつ膝をつく
さかいめ ちぎり絵
きっと結んだ
汽笛のくちもとをほぐしゆく
記す度に霧は濃く
紙のはざまの夜を埋める
交わるままの火の絵筆
窓をつなぎ灯をつなぐ
いつわりの目
片方つむる子
風を噛み
風をゆく
さやさやとさやさやと
水のなかの鏡に
触れようとして手を切り
さやさやとさやさやと
鏡のなかの頬は暮れる
おぼろな冬のふちどりに
うたわない穂がうたうとき
子はもう片方の目をつむり
ほんとうを静かに泳がせる
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