美しき日々/
石畑由紀子
あまりに懇願されるので
試しに小指を与えてみた
男は急いで口に運び
コクリと飲み込むと
生あたたかい求愛がわたしに届く
唾液に光った男の喉をうっとりと通りぬける
わたしの小指
満たされるはずなどなかった
男は次を欲しがって
わたしは断る理由を失くした
そのとき すでに音を立てて
部屋ごと垂直に転落しているのを
男もわたしも気づかずにいた
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