沈黙の質量/藤原有絵
「迷っていたけれど
そういうふうに
生きていく事にしました」
密やかな決意を
胸の中で繰り返し
そこへ行き着いた
あなたの思いに対し
親指は言葉を探せなくて
携帯電話を閉じました
わたしはそのとき
すっかり寒い色をした
プールの飛び込み台に座って
ドーナツを齧っていました
少しだけわたしの事を話すと
なんとも気ままで
華やかさに欠ける日々です
それもまた
迷いながらも望んでしまった
わたしの暮らし方
ほら やっぱり
あなたの決意に
添える言葉なんてないんです
言葉が無い事が
あなたの新しい日々への
わたしの思いです
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